急に涼しくなり、紅葉の季節がぐっと近づいてきたように感じます。
これから冬に向けて、お庭の掃除は一仕事です。
緑だった葉が、赤や黄色に染まり、やがて はらり はらり と一枚残らず全て地面へと落ちていきます。
ご家庭のお庭に、もみじの木のある方は、特に首を縦に振っていらっしゃるのではないでしょうか。
私も小さな頃、実家のお寺の境内の庭掃除をよく手伝ったのですが、長い竹箒を横に持ち、少し湿った落ち葉の重みと格闘しながら汗をかきかき夢中で掃き、葉っぱの山がいくつもいくつも出来上がり、さあ一休みと後ろを振り返ると、綺麗に掃いたばかりなのに、もう落ち葉が何枚も落ちていて、がっかりしたのを覚えています。
それでも落ち葉を掃いた後の庭はスッキリとして、とても清々しい気持ちになったものです。
掃除をすると、箒一本で悟りを開いたお釈迦さまのお弟子さんのお話を思い出します。
それは、「周利槃特(しゅりはんどく)」という名前のお弟子さんで、大変物覚えが悪く、自分の名前も忘れる程で名前を書いた札を背負っていたそうです。もちろんお経もおぼえられず、周りからも馬鹿にされ、お寺を出ようと泣いていたところ、お釈迦さまは、しゅりはんどくに一本の箒を渡し、「塵を払い、垢を除かん」と唱えながらお寺を掃除しなさいと言われました。
その日からしゅりはんどくは言われた通りに、来る日も来る日のその言葉を唱えながら一心に掃除をし続けたそうです。そして何年も経ったある日、気付きました。
毎日毎日掃除をしているのに、埃や垢はなくなることはない。これは人の心の中も同じだと。どんなにきれいにしても、心も埃や垢が出てくる。だから毎日、心を掃除し続けなければならないものなんだと。お釈迦様の真意に気付き、悟ったしゅりはんどくは、みんなの見本になる立派なお坊さんになったそうです。
心の塵や垢というのは、心を常に迷わせ乱すもの、煩悩のことを表わしています。
もっと欲しい、あの人が羨ましい、あの人のせい、あの時ああしていれば、、などなどモヤモヤする思いは尽きることなく、いろいろありますよね。
それらはまるで、絶えず次から次へと はらりはらり 毎日毎日きりがなく落ちてくる秋の日の落ち葉のようです。
それらにどんどん埋もれていってしまえば、本来の美しい心のあなたが隠れていってしまいます。
そのような思いが心に降ってくることを止める事が一番理想ですが、なかなか難しいものです。
でも、心はそういうものだと気付く事ができれば、「また降ってきたな。よし掃除しよう。」と心掛けることができ、よく整った心は、自然と前向きな気持ちになれるはずです。
心も掃除が必要です。自分の心をよく内観して、不満、後悔、嫉妬、諸々の自分を苦しめるだけの思いはさっさと捨てて、全て神さま仏さまにおまかせし、しゅりはんどくのように、今目の前の自分ができることを精一杯やっていれば、あなたの本来授かっている尊い生命が自然と輝いていくのです。