作品集

開運招福不動

このお不動さまは、私の描いたお不動さまの第一号です。

実は、病気で入院中の住職であった父が言葉を、私が絵を、父と一緒に作った最初で最後の作品の一つです。お寺のご本尊がお不動さまだったので、とても特別な想い入れのある作品です。

お不動さまとは、正式名称は不動明王(ふどうみょうおう)といいます。密教の中心の仏さま『大日如来(だいにちにょらい)』が衆生を救うためにあえて怒りの表情にお姿を変え、右手に剣左手に羂索(けんさく)という縄を持つお姿で、剣は私たちのよこしまな心や迷いを断ち切る意味があり、羂索の縄は悪を縛り上げたり、煩悩を断ち切れない者を正しい方へ縛ってでも導くという意味があります。そして後ろに背負っている火焔(かえん)で煩悩を焼き尽くすといわれています。仏さまの中では珍しく、蓮の華の上ではなく盤石(ばんじゃく)という大きくて堅い石の上に座っており、「衆生を1人残らず救う」というお不動さまの固い決意を表しているといわれています。

お不動さまの怒りは、まるで危ない所へ行こうとする子どもを叱って連れ戻す父親のような仏さまだと感じます。こわいお顔も、お節介なまでの慈悲の表れだと思うと、愛しく感じられないでしょうか。

お不動さまと真正面に向き合うと、自分の心の中に悪い心はないか、問い戒めてくださる気がして、身が引き締まります。心が自然と正されるようです。

父がこの作品を作るときに、こんなことを言っていました。

「心を正すと、行いが正され、行いが正されれば、信用や人徳も自然とついてくるもの。そして心を正そうと自分を見つめ直し反省し、努力する者にお不動さまは必ず大きな力を与えてくれるよ。」と。

 

2006年の作品 (絵はがきブック内)